生クリームの定義とホイップクリームの違いについて
お菓子作りに用いられることが多いクリームですが、生クリームやホイップクリームの使い分けに迷ってしまうことも珍しくありません。そもそも生クリームの定義とはどのようなものなのでしょうか。ホイップクリームとは何が違うのでしょうか。今回は生クリームの定義やホイップクリームとの違いについてご紹介します。
- 目次
01生クリームとは?
しかし、スーパーなどで生クリームを買おうとした場合、あまりに種類が多いことにびっくりするかもしれません。実は生クリームには様々な種類があり、特徴や用途も異なります。
さらにややこしいのがホイップクリーム。ホイップクリームには複数の意味があり、それを理解することが重要となります。
02生クリームの定義
生クリームを厳密に定義すると、「牛乳を分離して取り出した乳脂肪を原料にしたもの」ということになります。
ただし、生クリームと聞いて思い浮かべるのは、ケーキやパフェなどのトッピングとして飾られているもの。実はこれは、生クリームを泡立ててホイップ状にしたもの。
これが生クリームとホイップクリームの違いを分かりにくくしています。
生クリームとホイップクリームの違いを考えるときには、まずはホイップした生クリームと「ホイップクリーム」は別のものだということを覚えておきましょう。
03生クリーム・ホイップクリームの種類
3-1動物性(生クリーム)
実は生クリームの定義は法律によって定められています。生クリームは法律では「生乳、牛乳または特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、乳脂肪分を18.0%以上にしたもの」とされています。
つまり、牛乳以外のものから出来ているものは、生クリームではないということになりますが、実際には「生クリーム」という場合、それ以外の原料が含まれていることがあります。それを区別するためにも、スーパーなどで販売されている商品のパッケージには「純生クリーム」と表示されていることもあります。
ここでは生クリームはあくまでも牛乳や生乳を原料とした動物性のものとして話を進めていきましょう。
生クリームは、含まれている乳脂肪分の違いによって用途や味わいなどが異なります。
たとえば乳脂肪分が35パーセントと45パーセントの生クリームを比べると、乳脂肪分が低い方が口当たりや舌ざわりが軽くなります。
45パーセントのものは、しっかりとした乳脂肪の味わいがするもの。
さらに乳脂肪分の違いは、泡立ちにも関係します。
もし生クリームを泡立てた場合、乳脂肪分の高い物の方が短時間で泡立ちますが、分離もしやすく、泡立てすぎるとぼそぼそした食感となります。
3-2植物性(ホイップクリーム)
一方、スーパーで販売しているクリームの中には、植物性の脂肪分が加えられたものや、植物性脂肪分のみで作られたものなどの種類があります。
すでにご紹介したように、法律的にはこれらは「生クリーム」と呼ぶことはできません。
そのため、商品の表示などでは「ホイップクリーム」と記載されていることがあります。
この「ホイップクリーム」の中にも様々な種類があります。
3-3「クリーム」に乳化剤や安定剤を添加したもの
ホイップクリームの中には、牛乳や生乳を使用した生クリームに、乳化剤や安定剤を添加したものがあります。
これらは動物性の脂肪分を使用しているため、生クリームと近い味わいになりますが、添加物が加わっているため法律的には生クリームと表示することはできません。
添加物というと悪いイメージがありますが、安定剤などが加わることで分離しにくく、ホイップするときには扱いやすいというメリットもあります。
3-4乳脂肪に植物性脂肪を加えたもの(コンパウンドクリーム)
ホイップクリームの中でも、乳脂肪に植物性脂肪を加えたものは「コンパウンドクリーム」と呼ばれます。コンパウンドクリームは、動物性の乳脂肪と植物性の脂肪分が加わっているため、ちょうど中間の味わいと言われます。
また、植物性脂肪が加わっているため、価格もリーズナブルで口当たりが軽いなどのメリットもあります。
3-5植物性脂肪のみのもの
本来生クリームは動物性の乳脂肪だけを使って作られるものですが、ホイップクリームの中にはその反対で、植物性脂肪のみで作られたものもあります。
この植物性脂肪のみのクリームはパーム油などが原料で、動物性の乳脂肪を使ったものに比べると賞味期限が長い、食感が軽いといった点が特徴です。
04生クリームとホイップクリームの特性の違い
4-1原料
生クリームの場合、原料は生乳や牛乳など。ホイップクリームは動物性の乳脂肪だけでなく、様々なものが加わります。この原料の違いによって様々な特性が生まれます。
4-2色
生クリームの場合、色は真っ白というよりもやや黄色がかっています。逆にホイップクリームは真っ白。もしケーキのデコレーションなどで、見た目を白く仕上げたい場合にはホイップクリームを使ったほうが美しく仕上がります。
4-3味
生クリームはたっぷりと乳脂肪が含まれているため、リッチな味わい。コクが豊かで、くちどけもよいのが特徴です。ただし、人によっては生クリームのリッチさが「くどい」と感じることもあるかもしれません。
一方ホイップクリームの場合、含まれている生クリームに比べるとクセがなくあっさりとした味。ただし、泡立てたものを口に入れると、溶けるというよりもそのまま潰れるといった食感があります。
4-4賞味期限
生クリームの場合、賞味期限は約10日前後と言われています。ただしこれは未開封の場合なので、開封後、、使用するときは変質していないか、しっかり確かめる必要があります。また、夏場などの場合には要注意。開封した場合には、できるだけ早く使ったほうがよいでしょう。このような理由から、少量使いたい場合や、ある程度の期間保存したいときには生クリームは不向きです。
逆にホイップクリームの賞味期限は、未開封で約一か月以上。こちらも開封した後はできるだけ早く使う必要がありますが、生クリームに比べるとホイップクリームは圧倒的に長持ちするということができるでしょう。
4-5泡立てやすさ
クリームを泡立てるときには含まれている乳脂肪分が大きく関係しています。含まれている乳脂肪分が高ければ高いほど、クリームは泡立ちやすくなります。逆に含まれている脂肪分が低い場合、時間をかけてもクリームはなかなか泡立ちません
そのため、ホイップクリームは生クリームに比べて泡立ちにくいという特徴があります。
4-6デコレーションのしやすさ
ホイップクリームは色が白いだけでなく、時間が経ってもだれにくいことも特徴です。そのため、デコレーションが簡単。まだケーキ作りに慣れないときやデコレーションに自信がない場合にはホイップクリームを使うのがよいでしょう。
4-7分離・劣化
クリームを泡立てているとき、気を付けたいのが泡立てすぎ。もし泡立てすぎて脂肪分と水分が分離すると、元に戻すことはできません。
一般的に、生クリームの方が分離しやすい傾向にあるため、泡立てるときには注意が必要です。
05まとめ
この講座は!プロの監修を受けています!
短大食物科卒業後、同校の調理研究室の助手として10年勤務し、校内の先生、外部講師のホテルシェフや料理家からも技術を習う。
その後、洋菓子研究家 柴川日出子氏のアシスタントとして10年研鑽を積む。
東京都菓子学園卒業。
企業の商品開発を行いながら材料・素材の知識を深めるほか、海外留学や国内外多くのシェフより技術を習うなど、現在も勉強を続けている。
著書も多く、海外で翻訳本も発売されている。
企業や雑誌等へのレシピ・写真・動画提供も多数行っている。