なにが違うの?カリグラフィーの書体の種類や特徴について
アルファベットを手書きで描くカリグラフィーは趣味としてはもちろん、仕事としても活用できるもの。実は一口にカリグラフィーといっても、使われる書体は非常にバリエーション豊かです。今回はカリグラフィーの魅力である書体の種類や特徴についてご紹介します。
- 目次
01カリグラフィーの書体
カリグラフィーを一言で説明すれば、「手書きの文字を美しく見せる手法」ということになります。
いわば、カリグラフィーはヨーロッパの書道。カリグラフィーはローマ時代に生まれたもので、現代までその時代に応じて歴史と共に発展したもので、地域や時代に合わせて様々な書体が誕生しました。
02カリグラフィーの基本書体
最初のカリグラフィーと言われている書体が「ローマンキャピタル体」。ローマンキャピタル体は記念碑の銘文や墓石の墓碑銘に刻まれる時に使われた書体で、トラヤヌス帝の戦勝記念塔にもローマンキャピタル体が刻まれています。このローマンキャピタル体はその後発展して様々なローマン体の原型となっていきます。
そのため現在パソコンなどで目にする書体の多くに、ローマンキャピタル体の影響を見ることができます。
03カリグラフィーの歴史と書体
3-1ラスティック体
ローマンキャピタル体と同じ時期に生まれた書体が「ラスティック体」です。ラスティック体はローマンキャピタル体と同じように、記念碑は墓石に刻まれるだけでなく、書籍用の文字としても使用されてきました。
当時の書籍は現在のように印刷されたものではなく、すべて手書きのもの。
一方、記念碑などの文字はハンマーとノミによって刻まれるもので、ラスティック体はより手書きに向いた文字として、その後、十一世紀ごろまで用いられるほど人気を集めました。
3-2アンシャル体
アンシャル体は四世紀ごろに登場した書体です。アンシャル体はローマでキリスト教が認められるようになったあと、宗教関係の写本などで使用されるようになりました。
写本とは、元になる本を手書きで書き写したもの。現在のようにコピー機がない時代には、本は書き写すことでコピーするのが一般的でした。
アンシャル体はこれらの文書などに使用され、文字によっては標準の高さの上や下に突き出す線があるのが特徴。これらの文字は現在の小文字のルーツになったといわれています。
また、より突き出す線がはっきりした「ハーフアンシャル体」も生まれ、より文字の大きさや長さの違いがはっきりと読み取れるようになっていきます。ハーフアンシャル体は書きやすいため、ヨーロッパの各地に広がっていくようになりました。
3-3カロリンジャン体
八世紀の終わりごろ、カール大帝がヨーロッパの統一に成功すると、文字も統一する必要が生まれました。そこで生まれたのがカロリンジャン体。カロリンジャン体はヨーロッパ全土に広がり、多くの文書がカロリンジャン体に訂正されました。
なお、現在使われている大文字や小文字の考え方はこのカロリンジャン体にルーツがあるとも言われています。
04代表的な人気書体
4-1ゴシック体
ゴシック体はパソコンのフォントとしてもおなじみの書体です。今でこそすっかりビジネス文書などにも使用されるようになりましたが、元々はゴシックには「神秘」「退廃」といった意味合いが含まれていたもの。「ゴシックファッション」などに代表される、神秘性や怪しい美しさが特徴です。
そんなゴシック体はファッションでも多く使われる「黒」のイメージが強く、さらに文字と文字の間隔が詰まっているため、文字に存在感と独特のセンスを感じさせることができます。
ゴシック体を描くときには非常に平らなペン先が用いられるため、文章全体にセンスと力強さを感じさせることができます。
4-2イタリック体
最初にカリグラフィーを始めたとき、まず取り組むのがイタリック体。イタリック体は「斜体」としても知られている書体で、傾いた文字が特徴ですが、カリグラフィーの場合には必ずしも文字が傾いているわけではありません。
イタリック体は美しいだけでなく、早く簡単に書けるということが特徴のひとつ。
これはイタリック体が生まれた歴史と深いかかわりがあります。イタリック体が生まれたのは十四世紀後半。この時期はルネサンス期に当たり、書物への需要が急増、さらに紙には限りがあったことから、できるだけ文字を詰めて、早く書き写せることからイタリック体が誕生しました。
その後、ローマ教皇庁の書体として採用されたことから人気を高め、現在でも華美な装飾も控え目で、ペンの扱いに不慣れな初心者にも取り組みやすい書体とされています。
4-3カッパープレート体
カッパープレート体は優雅で流れるような文字が特徴の書体。非常にエレガントな雰囲気を持っているだけでなく、美しい装飾が加わることでさらに豪華に見えることから、カリグラフィーを学ぶ人の中でも人気が高い書体です。
カッパープレート体は、もともとイタリック体をベースにした書体で、さらに書く速度を追求するなかで生まれたもの。
流れるような文字は美しさを重視しているだけでなく、実用も伴って誕生しました。
といっても、カッパープレート体はカリグラフィーの書体の中では難易度が高いもの。
美しいカッパープレート体を描けるようになるには、しっかりとした練習が必要です。
05近年人気のモダンカリグラフィー
カリグラフィーは活版印刷の発明によって衰退し、タイプライターが使用されるようになると、手書きの文字への需要は少なくなり、招待状などごく一部の用途に限られるようになりました。
しかし、その後イギリスで大量製品のデザインではなく、美しい手作業を見直す芸術運動「アーツアンドクラフツ運動」が起こり、カリグラフィーは再び脚光を浴びるようになりました。さらに現代で生まれたのが「モダンカリグラフィー」。
伝統的なカリグラフィーは、文字の書き方に厳しいルールがあるもので、お手本に出来るだけ近い文字を書くことが重要。
それに対してモダンカリグラフィーは、文字の正確性よりもデザイン性を重視しているのが特徴です。
従来のカリグラファーでは厳密に決められた文字の高さや形、角度なども自由にアレンジすることができます。
モダンカリグラフィーはいわばアート作品。文字の書き手の技術や考え方、表現したいことをはっきり表すための手法です。
といっても、好きなように書けばいいというわけではありません。モダンカリグラフィーでも文字の書き方の基本は非常に重要。
そのため、モダンカリグラフィーに挑戦する場合にも、基本的なカリグラフィーの知識や技術が重視されます。
06まとめ
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