美味しい焼酎には不可欠!焼酎の熟成期間と貯蔵方法について
美味しい本格焼酎に必要なのが熟成の期間。しっかりと熟成が行われた焼酎は味も香りもバツグンです。では焼酎の熟成と貯蔵にはどのような意味があるのでしょうか。今回は焼酎の熟成期間と貯蔵方法についてご紹介します。
- 目次
01焼酎の熟成期間
1-1本格焼酎や泡盛は新酒でも美味しく飲める
焼酎はウイスキーやブランデーと同じく、「蒸留」という工程を経て作られるお酒です。蒸留とはアルコールを含んだ液体を加熱、そこから不純物を取り除きながら、純度の高いアルコールを抽出するというお酒造りの方法。
蒸留酒であるウイスキーやブランデーの場合、熟成は欠かせないプロセス。熟成を行うことで、樽の香りと色がお酒に移り、香りや味もまろやかになります。
しかし日本の本格焼酎や泡盛は、出来たばかりの新酒であっても美味しく飲めることが特徴です。
また、ウイスキーやブランデーの場合、熟成には数年から十数年という長い時間がかかることもありますが、焼酎の熟成は長いものでも数ヶ月程度。製造から一か月から三か月後には出荷されることがほとんどです。
では、なぜ焼酎はこれほど短い期間で美味しくなるのでしょうか。
これは本格焼酎の熟成の目的と関係しています。
本格焼酎の場合、熟成させる目的はまず酒の香りや味を安定させること。というのも、蒸留したばかりの焼酎には独特のにおいが残っています。
これは蒸留したての焼酎には、アルデヒトや硫黄化合物など揮発しやすい成分が混ざっているから。
熟成は出来たばかりの焼酎をタンクで貯蔵、これらの不要な成分を揮発させるために行います。
さらに、焼酎といえば無色透明というイメージですが、実際には出来たばかりの焼酎は透明ではありません。
出来たばかりの焼酎には原料に含まれる油が残った状態。製品となる状態にするためには、この油分を取り除く必要があります。
そこで焼酎を貯蔵し、油を表面に浮かせて、不要な油分を除去します。
この油分は放置すると「油臭」という匂いの原因になり、さらに酸化しやすくなることで焼酎の劣化を促進します。
ただし、焼酎の油分は柔らかい口当たりやまろやかな風味にもつながるため、すべてを取り除くと物足りなさを感じてしまうことも。そこで適切な油分を取り除くことも職人の腕の見せ場となります。
その他にも、熟成にはアルコールと水を馴染ませて、焼酎にまろやかさを与える効果もあります。
1-2長期熟成の区分と効果
一般的な焼酎は短期間の熟成を経て出荷されるもの。しかし、中には長期間の熟成を行うものもあります。その代表的なものが泡盛。泡盛は長期の熟成を行うことで味に深みやコクを増していくもの。
では熟成の期間にはどのような区分と効果があるのでしょうか。
一般的な焼酎の熟成期間は三か月未満。熟成の期間が三か月を超えて六か月程度になると「初期熟成」という名前で呼ばれるようになります。初期熟成のものは、刺激臭が減少。焼酎の刺激的な香りが少なくなるため、より飲みやすいものに変化します。
さらに三年未満の「中期熟成」になると、焼酎の中に含まれている香り成分が変化。刺激的な香りがまろやかな香りになり、さらにそれが安定するようになります。
熟成期間が三年を越えたものは、泡盛の場合には「古酒」と呼ばれるようになります。
古酒は香りや味、コクなどが豊かになり、お酒が苦手という人でも深い味わいを楽しむことができます。
02焼酎の貯蔵方法
2-1かめ貯蔵
現在の焼酎造りではタンクによる貯蔵が一般的ですが、それ以前に行われていたのがかめによる貯蔵です。
素焼きのかめの表面には目に見えないサイズの穴があり、そこに入り込んだ空気が自然に焼酎の熟成を促すという効果が。また、穴からは焼酎から出たガスが抜けるため、熟成が早いという効果も。
さらにかめには様々な無機物が含まれていて、それらがアルコールとまじりあうことで、口当たりよくまろやかな風味が生まれます。
2-2樽貯蔵
ウイスキーやシェリーなどでも使われているのが、木製の樽による貯蔵です。樽に使われるのは主にウイスキー樽やシェリー樽で、これらの樽に焼酎を貯蔵することで、木に含まれるタンニンなどの物質が焼酎に溶けだし、ウイスキーのような琥珀色とバニラのような香り、独特の風味などが生まれます。
味も甘味を強く感じるようになり、個性的な焼酎に仕上げることができます。
2-3ステンレス製やホーロー製のタンク
現在、貯蔵の主流となっているのがステンレスやホーロー製のタンクです。
焼酎の貯蔵といえば、お酒を容器に入れてゆっくり寝かせるというイメージですが、ステンレスやホーローのタンクの場合、焼酎をかき混ぜることで、蒸留直後の焼酎に含まれている刺激臭を揮発させ、熟成を進めます。
ステンレス製やホーロー製のタンクの場合、かめや樽に比べると熟成の速度がゆっくり。そのため、一か月から三か月程度の短期の熟成に用いられることも少なくありません。
また、樽のように色や風味がつくこともないため、無色透明の一般的な焼酎の貯蔵に使用されます。
ステンレス製やホーロー製のタンクの場合、かめや樽に比べると、非常に大容量の貯蔵が可能。そのため生産性に優れているため、リーズナブルな価格を保てるというメリットがあります。
さらに大型タンクの場合、樽のような不要な匂いが焼酎に付かず、そのままの味と香りを楽しめるというメリットも。
また、かめや樽の場合には、貯蔵に使った設備の個性がはっきりと生まれます。言い換えれば、どのかめや樽を使うかで、熟成後の製品の品質にばらつきが出てしまうことも。
それに対して、タンクの貯蔵ではでは品質はすべて一定。容器による影響が生まれることはなく、焼酎の味をそのまま楽しむことができます。
03焼酎の色
このタイプの焼酎は、樽での長期熟成が行われるのが一般的。ウイスキーと同じく、樽で長期間貯蔵することで、樽の色が焼酎に移り、琥珀色が生まれます。
また樽による熟成は樽の深い香りを楽しむことができる貯蔵方法。これまでの焼酎にはなかった香りを生み出すことができるのも人気の秘密。
ただし、そのためには焼酎と樽の相性も重要で、樽の香りとバランスの取れた焼酎を作る必要があります。
また、大きな問題のひとつが琥珀色。実は焼酎の色は「酒税法」という法律によって決められています。そのため、琥珀色が強くなりすぎると、「本格焼酎」と名乗れなくなってしまう可能性も。
そのため、仕上げには分光光度計による色の調整が必要になることもあります。
特に良い樽は数に限りがあり、スペースも必要。そのため、樽での長期熟成には、タンクなど他の容器と併用しながら熟成を続けるといった工夫も必要になります。