メリットだけでなくデメリットも!「きざみ食」の基本と作り方について
年を取ると、噛む力が衰えたり、入れ歯が合わなくなったりと、食事を食べることが難しくなる場合があります。そんなときに役立つのが「きざみ食」。今回はきざみ食の特徴や作り方のポイント、レシピなどを紹介します。
- 目次
01きざみ食とは?
1-1食材を細かく刻んだ食事
きざみ食は、普通の食事を食べやすくするため、5ミリから1センチ程度に細かく刻んだ食事のことです。
通常の食事を食べる場合は、歯で噛むことによって口の中で食材を細かくして飲み込みやすくしますが、高齢化によって噛む力が衰えると、なかなか食材を細かくすることが難しくなります。
また、歯が悪い人の場合には、上手く噛めないだけでなく痛みなどが出ることも。そうなると、食事を楽しむことができなくなってしまいます。
きざみ食を用いると、すでに食材が刻んであることで、歯が悪い人にとって痛みが出ることもありません。
1-2向いている人
きざみ食は高齢者にとって非常に食べやすい食事ですが、どのような人にでも向いているというわけではありません。
きざみ食が向いているのは、あごの周りの筋肉が衰えることによって口が開きにくくなったり、噛む力が弱くなった人。また、高齢者は歯のトラブルがあることが少なくありませんが、歯が抜けてしまった人や、歯が悪い人、入れ歯が合わないという人にも向いている食事です。
1-3デメリットもある食事形態
きざみ食は高齢者にとって便利な食事の形態ですが、注意しなければならないこともあります。
というのも、きざみ食は口を開けたり、噛む力が弱くなっている人にとっては便利ですが、食材を刻むことでデメリットも生まれるもの。また、噛む力だけが衰えている人は少ないため、他にも衰えている部分がある場合、逆に食べにくくなってしまうこともあります。
そのため、きざみ食は高齢者の身体の状態に合わせて用いることが必要になります。
02刻み食の特徴
2-1きざみ食のメリット
きざみ食の大きなメリットは、「噛まなくても食べられる」ということです。食事を食べるときにはどうしても噛むことが必要ですが、噛む力が衰えていると、固いものを噛むことができないだけでなく、長時間噛み続けていることも難しくなります。
しかし、もともと食材を細かく刻んであるきざみ食の場合、噛む回数が少なくて済むため、高齢者への身体や消化器への負担が少なくなります。
また、見た目が良いというのもきざみ食のメリットのひとつ。
高齢者の介護食の中には、食材をミキサーにかけたミキサー食などもありますが、ミキサー食の場合、すべてがペースト状になってしまうため、何を食べているのか分からなくなってしまうことも珍しくありません。
さらにミキサー食は彩りもなく、食べていてもつまらないといったことも起こりがち。
しかし、刻み食の場合は通常の食事を細かく刻んでいるだけなので、見た目はほぼ普通食と変わらず、見た目でも食事を楽しむことができます。
また、ミキサーにかけるとなくなってしまいがちな香りも保てるため、食事を食べる人の食欲増進にも効果が期待できます。
2-2デメリット
様々なメリットのあるきざみ食ですが、一方ではデメリットもあります。
きざみ食の大きなデメリットが、誤嚥の危険があるということ。
誤嚥とは食べ物が食道ではなく、気管に入ってしまうことですが、もし誤嚥を起こすと肺炎などにつながり、体力が低下している高齢者には命とりになってしまうこともあります。
健康な人であれば、口の中で食べ物をまとめて飲み込むことで誤嚥を防いでいますが、飲み込む力が衰えている高齢者の場合、食べ物をまとめるのが難しく、誤嚥を起こしてしまいがち。
さらに食物を細かく刻んでいるきざみ食は、口の中で食べ物がバラバラになってしまいやすいため、結果として誤嚥のリスクが高くなってしまいます。
また、細かく刻んだ食べ物は、入れ歯の間や歯の間に挟まりやすく、それが原因で虫歯や歯周病になってしまうことがあります。
それに加えて高齢者にとって歯のケアは難しいため、きざみ食を食べたあとには口腔ケアが必要になります。
きざみ食を作るときには、包丁やまな板を何度も使用することになり、食中毒のリスクも高くなります。
特に調理用のまな板と、食事を刻むまな板を分けていない場合には雑菌も繁殖しがちです。そのため、食中毒を防ぐためには調理道具を分けたり、作業ごとに消毒を行ったりといったケアが必要になります。
03きざみ食の作り方とポイント
3-1きざむ
きざみ食の基本は食材を刻むこと。もし水分が豊富な食材や柔らかいものであれば、刻むだけで十分に食べることができます。その場合には、噛む力に応じて大きさを調整するとよいでしょう。
一方、水分が少ないものや、ある程度の固さがある食材を使う場合には調理方法を工夫する必要があります。
たとえば、キャベツなどもともとの水分が少ない食材の場合には、汁ものなどに入れて水分を補うと食べやすくなります。
また、揚げ物など汁ものに入れるのが難しい場合には、たれやソースを含ませることで水分を補うという方法があります。その他にも、ダシで煮たり、卵でとじることで食べやすく工夫することも可能です。
3-2ほぐす、つぶす
食材の中には、刻むことが難しいものや、刻むと逆に食べにくくなってしまうことがあります。
たとえば焼き魚や煮魚。これらの魚料理をきざみ食にする場合には、食べやすい大きさにほぐしたほうがよいでしょう。
また、かぼちゃやじゃがいもなど、口の中の水分がなくなってしまいがちなものは、潰して適度な大きさにしましょう。
04きざみ食を調理するときの注意点
4-1口の中でまとまりやすくする
まず、きざみ食で重要なのがとろみをつけること。
すでに説明したように、食材を細かく刻んだだけでは食材が口の中でまとまらず、飲み込みにくくなり、誤嚥の原因となります。
それを防ぐためにも、片栗粉などでとろみをつけて食べやすく工夫しましょう。
また、食材によっては単に刻んだだけでは口当たりが悪くなってしまうものもあります。その場合には水分を補うことが必要です。
4-2調理用具を清潔に
高齢者に食事を提供するときにもっとも注意しなければならないのが食中毒。高齢者は体力だけでなく、免疫力が低下しているため、健康な人にとっては大したことがない場合でも、非常に危険な状態に陥ってしまう可能性があります。
それを防ぐために徹底したいのが、包丁やまな板の消毒です。
きざみ食の場合、包丁やまな板に食材が触れることが多くなるため、一般的な食事に比べてしっかりと消毒を行う必要があります。
また、肉や魚を洗ったときの水の飛び散りにも注意が必要です。
肉や魚の表面には雑菌が付着していることがありますが、それを水で洗うと、雑菌がシンク一面に飛び散ってしまう結果に。そのため、水洗いをする場合にはシンクの消毒も行いましょう。
さらにきざみ食は普通の食事に比べて表面積が増えることで細菌が繁殖する可能性が高くなります。
できれば作りたてを提供し、残ったものは翌日などに持ち越さないように気を付けましょう。
05刻み食レシピ
5-1親子丼
鶏肉、タマネギは普通食の場合よりも細かく刻みます。特にタマネギは繊維が残りやすくなるため、繊維を断ち切るようにカットします。
次に鍋に出汁としょうゆ、みりん、砂糖を入れてひと煮立ちさせたあと、具材を入れて加熱します。
具材に火が通ったら水に溶いた片栗粉でとろみをつけて卵でとじます。
柔らかく炊いたご飯に具を乗せれば親子丼の完成です。
5-2肉の網焼き
高齢者は味覚が衰えているため、味の濃いものを美味しいと感じることが多くなります。そんなときにおすすめなのが肉の網焼きです。肉はどのようなものでも構いませんが、肉を選ぶときには、出来るだけ脂の多いものを使用しましょう。赤身の肉は水分が少なく、飲み込むのが難しいことがあります。
もし肉にスジがある場合には細かく包丁を入れて、肉を叩いて繊維を伸ばします。
次に、肉を網で焼き、焼き上がったら小さなサイズにカットします。
たれはお好みのもので構いませんが、水で溶いた片栗粉を加えると、とろみがついて飲み込みやすくなります。
5-3ポテトサラダ
きざみ食のポテトサラダを作るときは、具材の大きさと柔らかさに注意しましょう。通常のポテトサラダの場合、ジャガイモを加熱するときには串などがすっと通る固さが目安になりますが、きざみ食にする場合にはさらに柔らかめになるように加熱を行います。
また、ジャガイモは粒が残らないようにしっかりと加熱を行います。
ポテトサラダに加える食材はお好みで構いませんが、キュウリを加えるときにはあらかじめ塩揉みをして柔らかくしておくとよいでしょう。
また、ハムなどの食材は薄くて噛みにくいため、できれば避けたほうがよいでしょう。
もしマヨネーズ以外に酢を加えたいというときには、あらかじめ加熱して酸味を飛ばしておくほうがよいでしょう。酸っぱい食べ物はむせてしまうこともあり、誤嚥の原因になってしまいます。