子供に対する虐待の種類と定義
近年、大きな社会問題となっている虐待。連日ニュースで報道される痛ましい出来事に心を痛めている方も多いかもしれません。実は虐待には様々な種類があります。今回は虐待の種類や定義についてご紹介します。
- 目次
01子供の虐待とは?
1-1心身の成長に悪影響をあたえる
子供に対する虐待は、子供の心身の成長や人格の形成に大きな影響を与えます。
というのも、虐待を受けて育った子供は、大人になっても子どもに対する接し方が分からず、結果として自分の子供に対しても虐待を行うようになってしまいます。
また、虐待を受けている子供は安心できない環境での生活を強いられるため、落ち着いて学習が行えないなど、知的発達の面でも健全な成長を行うことができません。
その他、虐待を受けたことで自己評価が低くなる、親が暴力で問題を解決することを模倣して粗暴な行動を取る、虐待で受けた心の傷が心的外傷後ストレス障害として残ってしまうなど、様々な問題となって影響することもあります。
1-2児童虐待
子供に対する虐待は、一般的には「児童虐待」と呼ばれます。これは法律によって定められているもので、親権を行うものや未成年後見人など、児童を監護する役割にあるものが児童に対して行う虐待のことを指しています。
この虐待は、子供を傷つけることだけでなく、子供の権利を侵害する行為だと考えられています。
なお、専門家の中には虐待をより広い範囲でとらえて、家族ではない外部からのかかわりも含めて「不適切なかかわり」という言葉を使うという考え方もあります。
1-34つの種類に分類される
虐待というと、子供に直接的な暴力を振るうというイメージがありますが、実はそれ以外の形で虐待が起きることもあります。
この虐待は内容によって「身体的虐待」「性的虐待」「心理的虐待」「ネグレクト」の四つの種類に分類されています。
02虐待の定義
2-1児童虐待防止法第2条
虐待は児童虐待防止法の二条によって規定されています。それによれば、「児童の身体に外傷が生じ、または生じる恐れのあるいは暴行を加えること」「児童にわいせつな行為をすること、または児童に対してわいせつな行為をさせること」「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食、または長時間の放置、保護者医大の同居人による行為、保護者としての監護を著しく怠ること」「児童に対する暴言や拒絶的な対応、同居する家庭の配偶者に対する暴力によって生命や身体に危害を及ぼす攻撃や心理的外傷を与える言動を行うこと」とされています。
つまり、直接的な暴力がなくても子供側にとって有害となる行為があれば、それは虐待だと考えられるのが一般的です。
2-2虐待としつけの違い
虐待を行っている親の中には、それを虐待ではなく「しつけ」と考えていることも多く、この解釈が大きな問題となることもあります。
また、虐待としつけの間にはグレーの部分が多いのが実状。
しかし現在では、子供が耐えがたい苦痛を感じるのであれば虐待に当たるという考え方が一般的です。
さらに重要なのは、虐待はあくまでも子供の側から見た定義であるということ。
たとえば、親の中には子供をかわいがっていても、育児ストレスや家庭環境から結果的に子供を殴ってしまうという場合も起こり得ます。
しかし、親の気持ちがどうあれ、子供の側にとって有害な行為があればそれは虐待とみなされます。
03子供の虐待の種類
3-1身体的虐待
身体的な虐待は、文字通り殴る蹴るといった身体的な暴力を指しています。
殴る蹴る以外にも、首を絞める、激しく揺さぶる、おぼれさせるといった行為や、食事を与えない、戸外に締め出す、縄などで室内に拘束するといった行為、意図的に子供を病気にさせるといった行為も身体的虐待に分類されます。
3-2性的虐待
性的虐待とは、子供に対してわいせつな行為をすることや、児童にわいせつな行動をさせることを指しています。
子供への性交や子供の性器を触るといった性的行為はもちろん、それをそそのかすことも性的虐待に当たります。
このほか、子供にポルノグラフィーを見せる、ポルノグラフィーの被写体を強要するといった行為も性的虐待に含まれています。
3-3心理的虐待
心理的虐待とは、子供の心理に与える虐待のことです。
言葉によって子供を脅かしたり、子供の心を傷つけることを繰り返す、子供の自尊心を傷つけるような言動を行うことが心理的虐待です。
また、他の兄弟や姉妹と比べると著しく差別的な扱いをしたり、他の兄弟や姉妹に対して虐待を行ったりということも心理的虐待とされます。
このほかにも、配偶者に対する暴力や暴言も子供の心に大きな影響を与えれることから、これらも心理的虐待に当たると考えられています。
3-4ネグレクト
ネグレクトとは、本来であれば保護者が行わなければならない養育を放棄したり、怠慢が見られるといった行為を指しています。
たとえば、子供が大きな病気になっても病院に連れて行かない、乳幼児を置いたまま家を出るといった行為がこれに当たります。
さらに、親がパチンコに熱中して、車の中に放置された子供が熱中症で死亡する、乳幼児などを放置したまま外出した結果、火災が発生して子供が焼死するといった事件も、ネグレクトの結果によるものだと考えられます。
その他にも、子供の意志に反して学校に登校させない、子供の食事や衣服に関して健康状態を損なうほどの無関心や怠慢といった行為や、家に出入りする第三者が子供に対して行う虐待を放置するといった行為もネグレクトであると考えるのが一般的です。
04虐待について悩んだら
4-1子ども虐待防止の電話相談
もし子供を育てていてつらい、困ったと感じた場合や、身近に虐待を疑われる子供がいた場合、まずは子ども虐待防止の電話相談に連絡しましょう。
児童相談所の全国共通ダイヤルである「189」をはじめ、各地の児童相談所やNPOなどが運営するホットラインなどに連絡すると、専門的な知識を持ったスタッフが対応、多くの場合は匿名での相談も可能です。
まずはこれらの電話で相談してみましょう。
4-2専門家に相談
子育てや虐待についての悩みは専門家に相談にするという方法もあります。子供に関する問題のスペシャリストである児童相談所や、地域住民の保健指導や健康管理などを行う保健師といった専門知識を持った人に相談することで、行政からのサポートをはじめとする解決の糸口を見つけることができます。
4-3周りのひとにも助けを求める
多くの場合、虐待が起きる家庭は孤立しがちという特徴があります。その場合、周りの人にも助けを求めることが重要です。
ひとりで悩みを抱えていても問題は解決するどころかさらに深刻になってしまうことがほとんどです。