ライ麦とは?特徴と小麦粉との違い
最近、パン好きの間で注目を集めているのがライ麦パン。ライ麦はダイエットや健康によいというイメージもあり、女性を中心に人気が高まっています。ライ麦パンにはどのような特徴があるのでしょうか。また、小麦粉のパンとはどのような違いがあるのでしょうか。今回はライ麦の特徴や小麦粉との違いについてご紹介します。
- 目次
01ライ麦とは?
1-1イネ科に属する一年草
ライ麦はイネ科に属する一年草で、英語では「ライ」と呼ばれています。つまり日本語の「ライ麦」とは、英語の名称である「ライ」に分かりやすく「麦」を付けたものということになります。
1-2小麦に近い作物
ライ麦は食用を中心にヨーロッパや北アメリカで多く栽培されている作物です。もともとこれらの地域は寒冷な気候であるうえに、土壌に含まれている栄養が少なく、小麦の栽培には適していません。
しかしライ麦は寒冷地での栽培が可能。そのため、小麦を育てようとして失敗した後に残ったライ麦が穀物として利用されるようになったという歴史があります。
こういった特徴からライ麦はスカンジナビア半島や東ヨーロッパ、ドイツなどに広がり、パンの材料として使用されるようになりました。
02ライ麦粉の特徴
2-1栄養価が高い
ライ麦の特徴は、小麦に比べて栄養価が非常に高いということ。実はライ麦は、産業革命が始まった時代には一時的に重要性が低下した時代がありました。というのも、生活が豊かになると人々は小麦を求めるようになり、それによってライ麦の栽培量は低下してしまいます。
その風潮が変化したのはライ麦には小麦よりも優れた栄養効果があることが知られるようになってから。健康的な食べ物としての評価が高まり、現在では小麦よりも高値で取り引きが行われることも珍しくありません。
2-2ダイエット向き
ライ麦には優れたダイエット効果も期待できます。というのも、ライ麦は小麦のパンに比べると、糖質やカロリーが低く、同じ量を食べても小麦よりも太りにくいという特徴があります。
さらにダイエットにはカロリーや糖質などといった要素以外にも、「GI値」が重要とされています。このGI値とは、簡単にいうと、食べたあとにどれだけ血糖値が上がりやすいかという指標です。
もしGI値が高い食べ物の場合、口に入れたあと血糖値が急上昇。これはエネルギーに変わりやすいということではありますが、もし血糖値が急上昇すると、血糖値が降下したあと、強い空腹を感じることになります。さらに血糖値が上昇すると、体内では蓄えたエネルギーが脂肪に変換されるため、結果として太りやすい体質になってしまいます。
小麦で作ったパンの場合、GI値が90を超えるものも珍しくありませんが、ライ麦パンの場合、GI値は55前後と低め。結果として、ダイエットには非常に効果があります。
2-3ライ麦パンは噛み応えがあり満腹感も高まる
ダイエットにはしっかり食べ物を噛むことが重要。というのも、脳の満腹中枢は食べ物を食べても「満腹だ」という信号を出すまでに時間がかかります。そのため、早食いをしてしまうと、どうしても必要よりも多くの食べ物を摂取してしまいがち。
その点、ライ麦パンは噛み応えがあるため、しっかりと食べ物を噛むことができます。その結果、満腹感が高まるとともに、脳の満腹中枢が反応できるので、つい食べ過ぎてしまうといった無駄なカロリー摂取を防ぐことができるのです。
03ライ麦に含まれる栄養素
3-1水溶性・不溶性食物繊維
ライ麦に含まれている栄養素の代表的な存在としては、食物繊維が挙げられます。食物繊維は以前までは単なる食物のカスと考えられていましたが、現在では腸を整える作用が見直され、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルに次ぐ「第六の栄養素」とも呼ばれています。
この食物繊維には水に溶ける水溶性と、水に溶けない不溶性の二種類がありますが、ライ麦の食物繊維の特徴はこの二種類がバランスよく含まれているということ。
そのため、ライ麦パンは食物繊維を摂取するためには非常に優れた食品ということができるでしょう。
3-2ビタミンB類
ビタミンには様々な種類がありますが、特に重要なのがビタミンB類。ビタミンB類とはビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンなどの総称で、特にエネルギーの代謝に重要な役割を果たします。
エネルギーの代謝とは、簡単に言えば、摂取した糖質や脂質、たんぱく質を身体が活動するためのエネルギーに変えるということ。十分な栄養を摂取していても、代謝がうまくいかなければ活動のための力に変えることができません。
それどころか、摂取したエネルギーが脂肪に変わってしまうため、太りやすい体質になってしまいます。そのためビタミンB類をきちんと摂取することもダイエットには重要ですが、ライ麦パンはこのビタミンB類が非常に豊富に含まれています。
3-3カリウム
カリウムは体内に存在する量が一番多いミネラルと言われています。カリウムは体内の水分のバランスを維持し、神経伝達や心臓の機能に重要な役割を果たしていますが、日本人にとって不足しがちなミネラルとも言われています。
ライ麦にはこのカリウムも非常に豊富。特にカリウムは塩分の多い食事をしている人にとっては重要なため、ライ麦パンは健康に気遣う人にもおすすめの食品と言えるでしょう。
04小麦との違い
4-1グルテン
ライ麦と小麦の大きな違いは「グルテン」。グルテンはパン作りには欠かせないもので、パン生地の粘りや弾力性のもとになります。このグルテンがしっかり形成されると、発酵の際に生まれた炭酸ガスを外に逃がすことがなくなり、パンがしっかりと膨らみます。
小麦にはこのグルテンが豊富。水と粉を混ぜ合わせることで作りだされたグルテンの膜が炭酸ガスを包み込んで、ふっくらしたパンになります。
一方のライ麦の場合、グルテンではなく、グルテンに似たたんぱく質が含まれています。さらに詳しく言えば、グルテンは小麦に含まれている「グリアジン」と「グルテニン」が水を加えてこねることで生まれるもの。ライ麦の場合、グルテンの構成要素のひとつである「グリアジン」に似た「セカリン」という成分が含まれています。
このたんぱく質はグルテンと似た働きをしますが、グルテンほどの粘りや弾力はありません。
4-2パン作り
このように、小麦とライ麦の違いは含まれているグルテンの違い。この違いはパン作りやパンの食感にも現れます。
小麦粉のパンの場合、グルテンによって発生した炭酸ガスが逃がさず閉じ込められるため、多くの気泡が発生して、結果としてパンが大きくふくらみ、ふんわりとした食感が生まれます。
一方のライ麦の場合、同じように発酵で炭酸ガスが発生するものの、小麦で作ったパンほど大きく膨らむわけではありません。
その結果、ライ麦のパンは密度が高い、重くてどっしりとしたパンになります。
このライ麦のパンは、膨らまない代わりに保水性が高く、小麦のパンよりも長期間保存できるというメリットがあります。
4-3味
小麦粉で作ったパンの場合、香ばしくて小麦の風味が特徴ですが、ライ麦パンの場合、独特の酸味があります。
この酸味は、「サワー種」と呼ばれる酵母菌によって生まれるもの。サワー種の酵母菌は乳酸菌が主体となっているため、独特の酸味を持っています。
この酸味が小麦粉にはないライ麦パンの特徴です。
05まとめ
この講座は!プロの監修を受けています!
和裁士、一般事務職を経て調理師専門学校にて調理、パン、洋菓子、フードコーディネートを学ぶ。
その後、大手製パン会社のベーカリー部門に入職。
パン職人となる。
退職後、神奈川県茅ケ崎市の自宅工房にて、「3日目もふわふわパン」が焼けるようになるパン教室&販売shino'sパン工房を主宰。
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