奥が深い!タイの伝統医学について
美容やダイエットにも効果が期待できるタイ古式マッサージ。その理論的なベースとなっているのがタイに伝わる伝統医学です。では、タイの伝統医学とはどのようなものなのでしょうか。今回はタイの伝統医学の考え方についてご紹介します。
- 目次
01タイ伝統医学
伝統医学の中には、中国の漢方医学のように理論的な体型を持つものや、経験的な民間療法まで様々な種類がありますが。やがて西洋医学が発展し、世界中に広がっていくと、伝統医学はいかがわしいもの、非科学的なものとして排除されていきますが、現在では西洋医学では完治できない病気や病名をつけることができない症状や不調に対する西洋医学の代替療法として、伝統医療は見直される方向に向かっています。
タイの場合、伝統医学の起源は今から約2500年ほど前だと言われています。当時、釈迦の主治医であったとされるシヴァカ・ゴマラパット師が伝える医術が、仏教の伝来と共にタイに伝わったというのが通説となっていて、そのためタイの医学はインドの仏教医学や、アーユルヴェーダに大きな影響を受けています。さらに、当時世界最大の文明国であった中国からは中国の伝統医学である中医学が伝わり、それらがミックスされて、タイの風土や文化に合うような形で発展していきました。
1-1 土(地)・水・風・火の4大元素が基盤
タイの伝統医学がインドの医学であるアーユルヴェーダに強い影響を受けているというのはすでに説明した通りですが、このアーユルヴェーダの考え方がタイの伝統医学の基礎となっています。その代表的な存在が「タート」と呼ばれるものです。
「タート」とは、簡単に言えば世の中のあらゆるものを構成する要素のこと。
アーユルヴェーダでは、宇宙の構成要素を土、水、火、風、空の五種類として考えますが、タイの伝統医学では「土(地)・水・風・火」の四つの元素が基盤となっています。
タイの伝統医学では、人間の身体はこれら四つの元素によって構成されると考えます。また、人間だけでなく、宇宙もこの四つによって構成され、宇宙と人間の身体は別々の存在ではなく、それぞれがお互い密接な関係を持っているといるというのがタイ伝統医学の基礎となる考え方です。
この四つの要素は誰の身体にもそれぞれが持っているもので、これらがバランスを保っているとき、身体は健康な状態でいると考えられます。
また、これらの四つの要素のバランスに加えて、季節や気候、年代、場所、生活習慣などの兼ね合いが人間の病気の原因と考えます。
024大元素理論
2-1「土」
「土」は「タート・ディン」とも呼ばれる要素です。簡単に言えば、土の要素を持っているものは、火で燃やすと土に返る性質を持っているものです。
人間の身体で土の要素として分類されるものは約20種類あり、髪、毛、爪、歯、皮膚、筋肉、内臓といったものが土に当たります。
また、タイの伝統医学では人間のタイプも四種類に分類され、身体や骨格が大きく、紙が黒く、声がよく通り、太っていて頑丈といったタイプの人は「土」タイプの人だと考えれます。
2-2「水」
「水」は「タート・ナーム」と呼ばれる要素です。水の要素を持っているものは、流れたり、浸透したりといった性質を持っているものです。
人間の身体の中で水の要素として分類されるものは約12種類あり、血液、汗、胆汁、涙、リンパ液、脂肪といったものが水に当たります。
人間のタイプでいうと、スタイルがよく、涙の量が多く、身体のバランスが良く、暑さや寒さに強く、性格的には消極的な人は「水」タイプの人だと考えられます。
2-3「風」
「風」は「タート・ロム」と呼ばれる要素です。風の要素を持っているものは、流れる、動くといった性質を持っています。
人間の身体の中で風の要素として分類されるものは約6種類あり、頭から足へと流れるもの、足から頭へと流れるもの、内臓の中で動くもの、呼吸、血液の循環といったものが風に当たります。
人間のタイプでいうと、やせ型で髪は薄く、寒さに弱く、声が小さく、性格的には熱しやすく冷めやすいといった人は「風」タイプの人だと考えられます。
2-4「火」
「火」は「タート・ファイ」と呼ばれる要素です。火の要素を持っているものは、熱を発生させるという性質を持っています。
人間の身体の中で火の要素として分類されるものは約4種類あり、体温、高熱、消化のエネルギーなどが火にあたります。
人間のタイプでいうと、食欲が旺盛で髪は柔らかく、暑さに弱く、性格的には忍耐力に欠けるといった人は「火」タイプの人だと考えられます。
03伝統医学のタイ古式マッサージ
3-1タイ古式マッサージを用いて4要素の流れをよくする
タイ古式マッサージは、これまで説明してきた四つの要素のうち「風」とのつながりが大きいと考えられています。
タイの古式マッサージは指圧とストレッチを組み合わせた施術を行いますが、そのときに重要になるのが「セン」と呼ばれるエネルギーラインを刺激するということです。
エネルギーラインとは、人間の身体の中でのエネルギーの通り道のこと。中国の伝統医学でも「経絡」というエネルギーの流れる通り道についての考え方が用いられますが、「セン」もこれと同じく、体内のエネルギーが移動するときに通る場所と考えることができます。
もし「セン」が良好な状態であれば、エネルギーは自由に身体の中を移動できますが、もしこの通り道が滞っている場合、エネルギーは必要な場所に届くことができず、また身体の中で生まれた老廃物はきちんと排出することができなくなり、溜まり続けてしまいます。
そこでタイ古式マッサージでは「セン」の近くを指圧することで、エネルギーの流れを整えて身体を正常な状態へと導きます。
これは、先ほどの四つの要素で考えた場合、「風」の流れを整えるということになります。
また、「セン」の近くには血液が流れる血管や、リンパの通り道であるリンパ腺が位置しています。そのため、「セン」を指圧することは、筋肉が動いたときにポンプの役割を果たすのと同様に、血管やリンパ管の流れを促進します。そのとき、血液は身体のあちこちに酸素や栄養分を届け、リンパは体内の不要な水分や老廃物を排出します。つまり、これは四つの要素のうち「水」の流れが整えられるということ。
さらにタイ古式マッサージは指圧に加えて、ヨガに似たポージングのストレッチが行われます。これは身体の歪みを矯正し、筋肉や骨、内臓といった「土」の要素を整えることにつながります。また、ストレッチの際は深い呼吸を行いリラックスすることで、感情を鎮めて「火」のバランスを取ります。
このように、タイ古式マッサージでは施術を通して「セン」を刺激し、身体の中のバランスを整えていきます。
3-210本のラインのうち半数以上は足にある
重要な10本の「セン」は、タイの医学では非常に大切なものとされ、それぞれ違う場所や症状を司っています。そのため、タイ古式マッサージでは、症状によってどのラインを刺激するかということが定められています。
この10本の「セン」には、舌先から始まってのどや胸を経由してみぞおちにいたるもの、へそからスタートして腹部、胸部を経由して手を通って指先に至るものなど様々なものがあり、流派によって細かい部分が異なることもありますが、その半数以上が下半身を通っているという点では代わりはありません。
タイ古式マッサージは足の部分のマッサージが中心となりますが、「セン」が下半身に多く通っていることがその理由です。
また、タイ古式マッサージでは、肩や首に不調があったとしても、常に全身をくまなく刺激して、特に下半身を集中的に施術することがあります。もし上半身のトラブルであっても、下半身の施術が多く、それに納得できないということもありますが、「セン」は全身を通っていて、それが集中していることから、タイ古式マッサージでは、下半身へのアプローチが中心となることは知っておくとよいでしょう。
04まとめ
この講座は!プロの監修を受けています!
サロンを営みながら、体得した技術と知識を日本で伝えたいと思いスクールを始め、セラピスト育成にも努める。
タイ古式マッサージ・バリニーズ・筋膜ストレッチが専門分野。